要件メモを正本にする
この章では、AIとの壁打ちで決まったことをMarkdownの要件メモに整理します。
会話は、考えるための場所です。 しかし、長い作業を進めるときは、会話ログそのものを正本にしないほうが安定します。 あとから読み直すための要件メモを作ります。
この章でできるようになること
- 会話ログと要件メモの違いを説明できる
- 要件メモに入れる項目を分けられる
- AIに要件メモのたたき台を作らせる依頼ができる
正本とは何か
ここでいう正本とは、あとから作業の前提として読み直すファイルのことです。
AIとの会話では、途中で迷った案、採用しなかった案、あとで考えることが混ざります。 それをそのまま作業の前提にすると、AIも人間も迷います。
要件メモでは、会話の中から作業に必要な情報だけを取り出します。

要件メモに入れるもの
最初は、次の項目があれば十分です。
# 要件メモ
## 目的
## 利用者
## 決まったこと
## 未決定のこと
## 今回やらないこと
## AIに任せること
## 人間が判断すること
## 確認方法
この構成は、完璧な仕様書ではありません。 AIに作業を始めてもらう前に、最低限の前提をそろえるためのメモです。
決定と未決定を分ける
要件メモで特に大事なのは、決まったことと未決定のことを分けることです。
たとえば、次のように書きます。
## 決まったこと
- 学習ログを記録するWebアプリを作る
- 最初はログ一覧と新規追加だけを作る
- 見た目はシンプルで、スマホ最適化は後回しにする
## 未決定のこと
- ログの編集機能を最初から入れるか
- データをどこに保存するか
未決定のことを無理にAIに決めさせる必要はありません。 未決定として残すことで、あとから人間が判断できます。
やらないことを書く
要件メモには、やることだけでなく、やらないことも書きます。
## 今回やらないこと
- ログイン機能
- スマホ最適化
- 外部API連携
- 本番公開
やらないことを書くと、AIの提案が広がりすぎるのを防ぎやすくなります。 AIが良かれと思って追加提案してくる場合でも、要件メモを見れば止められます。
秘密情報は書かない
要件メモにも、秘密情報は書きません。
書かないものの例です。
- APIキー
- トークン
- パスワード
- 秘密鍵
- 認証コード
.envの中身
要件メモは、AIに読ませる前提のファイルです。 AIに読ませる可能性があるファイルには、秘密情報を書かない習慣を保ちます。
AIにたたき台を作らせる
AIとの一問一答が終わったら、要件メモのたたき台を作らせます。
ここまでの一問一答をもとに、要件メモのたたき台をMarkdownで作ってください。
次の見出しで整理してください。
- 目的
- 利用者
- 決まったこと
- 未決定のこと
- 今回やらないこと
- AIに任せること
- 人間が判断すること
- 確認方法
条件:
- 会話に出ていないことを勝手に決めない
- 未決定のものは未決定として残す
- APIキー、トークン、パスワードなどの秘密情報は書かない
- まだファイル編集、削除、commit、pushはしない
最初は、AIに本文をファイルへ書かせず、画面上にたたき台を出してもらいます。 内容を確認してから、必要であればファイル化します。
やってみる
前章でAIに質問してもらった内容を使い、要件メモのたたき台を作ります。
まだ実ファイルにしなくても構いません。 まずは、画面上で次の3つが分かれているかを確認します。
- 決まったこと
- 未決定のこと
- 今回やらないこと
この3つが混ざっている場合は、AIに整理し直してもらいます。
決まったこと、未決定のこと、今回やらないことが混ざっているように見えます。
この3つを分け直してください。
会話に出ていないことは追加しないでください。
AIに聞いてみよう
AIに要件メモをレビューしてもらうこともできます。
この要件メモを、AIに作業を頼む前の前提としてレビューしてください。
次の観点で確認してください。
- 決まったことと未決定のことが分かれているか
- 今回やらないことが明記されているか
- AIに任せることと人間が判断することが分かれているか
- 確認方法が書かれているか
- 秘密情報が含まれていないか
レビューだけをしてください。
まだファイル編集、削除、commit、pushはしないでください。
レビューの目的は、要件メモを完璧にすることではありません。 AIが作業を始める前に、危ない抜けを見つけることです。
何が起きたのか
この章では、会話で出た情報をMarkdownの要件メモに整理しました。
会話ログは思考の流れです。 要件メモは作業の前提です。 この2つを分けることで、あとからセッションを再開したときにも、AIに同じ前提を読ませ直しやすくなります。
次章では、resumeやcompactのあとに、どのファイルをAIへ読み直させるかを扱います。
次へ
次は、resumeとcompactのあとに読み直します。