第1部の確認
この章では、第1部で見てきた内容を、自分のプロジェクトに当てはめて整理します。
AIに長めの作業を任せる前に、先に作業環境を点検します。 ここでいう作業環境とは、エディタやターミナルだけではありません。 AIに見せる情報、守らせる制約、使わせる確認コマンド、人間が判断する場所まで含めた、作業の土台です。
この章でできるようになること
- AIに任せる前に確認する項目を説明できる
- 目的、コンテキスト、制約、確認手順を分けて整理できる
- 自分のプロジェクトに足りないメモやルールを見つけられる
まず全体を確認する
第1部では、AIに頼む文面だけでなく、AIが働く条件を整えることを扱いました。
確認する観点は、次の4つです。
- 決める
- 見せる
- 縛る
- 確認する
この4つが弱いままAIに長い作業を頼むと、AIはそれらしい作業を進めてくれます。 しかし、目的と違う方向に進んだり、見てはいけない情報を見ようとしたり、変更後の確認が曖昧になったりします。

決める
最初に、人間が判断することを決めます。
AIに作業を任せる場合でも、目的や採用する方針までAI任せにしないほうが安定します。 少なくとも、次を言える状態にしておきます。
- 何を作りたいか
- 何を直したいか
- どこまでAIに任せるか
- どの判断は人間が行うか
たとえば、次のように書けます。
この作業では、本文の構成案と初稿作成はAIに任せます。
ただし、章立ての採用判断と公開前の最終判断は人間が行います。
見せる
次に、AIに見せる情報を決めます。
AIに見せる情報が少なすぎると、AIは推測で作業します。 一方で、何でも見せればよいわけではありません。 秘密情報や、今回の作業に関係ない大きな情報まで混ぜると、判断がにごります。
見せる候補は、次のように分けます。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 作業対象 | 修正するファイル、関連する設定ファイル |
| 補助情報 | 要件メモ、過去の設計メモ、参考実装 |
| 方針 | AGENTS.md、コーディング規約、文章のトーン |
| 見せないもの | APIキー、トークン、.env、秘密鍵 |
この表は、プロジェクトごとに変わります。 重要なのは、AIに見せる範囲を人間が決めることです。
縛る
AIには、してよいことと、まだしてはいけないことを明示します。
たとえば、読み取りだけなら、次のように依頼します。
まずは読み取りだけで確認してください。
ファイル編集、削除、commit、push、インストールはまだ行わないでください。
確認したファイルと、気づいたことだけを教えてください。
変更を許可する場合も、いきなり実行させるのではなく、先に変更予定を出してもらうと安全です。
変更する前に、変更予定のファイル、変更理由、確認コマンドを一覧にしてください。
私が了承するまで、ファイルは編集しないでください。
確認する
最後に、AIの作業後に何で確認するかを決めます。
確認方法が決まっていないと、AIが「完了しました」と言ったときに、人間が受け止められません。 作業前に、最低限の確認コマンドを決めておきます。
よく使う確認は次の3つです。
git status
git diff
npm run build
プロジェクトによっては、testやlintも使います。 この段階で全部を完璧にする必要はありません。 ただし、「何を見れば変更を受け止められるか」は決めておきます。
やってみる
自分のプロジェクトを1つ思い浮かべて、次を埋めます。
目的:
AIに任せたいこと:
人間が判断すること:
AIに見せるファイルやメモ:
AIに見せないもの:
変更前に確認するコマンド:
変更後に確認するコマンド:
すぐに実プロジェクトでやらなくても構いません。 教材リポジトリや練習用リポジトリで、仮に埋めてみるだけでも練習になります。
AIに聞いてみよう
AIに、自分の作業環境を一問一答で点検してもらいます。
AIに作業を任せる前の準備を点検したいです。
次の条件で、私に質問してください。
- 質問は5問
- 一問一答形式にする
- 1問ずつ質問し、私の回答を待つ
- 各質問では、A/B/Cの選択肢も毎回表示する
- A/B/Cだけでは答えにくい場合は、短く自由記述してよいことも書く
- 5問が終わったら、私の回答をもとに不足している準備を整理する
- ファイル編集、削除、commit、push、インストールはしない
確認したい観点は、目的、AIに見せる情報、見せない情報、制約、確認コマンドです。
この聞き方では、AIにいきなり作業を頼むのではなく、AI側から質問してもらいます。 自分で全部の前提を書き出すより、抜けを見つけやすくなります。
何が起きたのか
第1部では、AIに渡す依頼を大きくする前に、作業の土台を分解しました。
AIは、会話の中で与えられた情報、見えるファイル、ツールで確認できる状態をもとに作業します。 そのため、AIの能力だけを見るのではなく、AIが働く環境を人間が設計することが重要です。
この考え方は、第2部のAGENTS.mdに続きます。 毎回同じ説明を手で書かなくてもよいように、リポジトリごとの作業方針をファイルとして育てていきます。
次へ
次は、リポジトリごとの作業方針をAGENTS.mdに書きます。